〜経済気象台〜
経済気象台(14.8.20) 業界の常識は
「洗剤イヤ子さん」という商品が発売された。超極細繊維を応用したもので、洗剤を使わずに手あか
やホコリを落とせる新型のぞうきんだ。早速買ってみた。思ったより使い勝手は良い。洗剤のいらない
洗濯機が発売された。超音波と電解水を使って、「着たから洗う」場合は洗剤ゼロ、「汚れたから洗う
」場合は洗剤半分の標準コースで良いという。洗剤アレルギーで困っている人が多くいて、環境への心
配りもあり、この洗濯機はヒット続けている。大した汚れがないものを、汚れたい類と一緒に洗剤を使
うことへの疑問は以前から抱いていた。
これらに対して、洗剤業界は黙っていなかった。「洗剤を中傷し、悪者にしている。商品名を変更し、
宣伝・販売を自粛してもらいたい」と、強硬に申し入れた。洗剤業界は競争が激しいうえに単価の下落
で苦戦し、危機感が強い。業界の存亡がかかっているので敏感に反応したのだろう。
そもそも合成洗剤が登場して以来、消費者運動や様々な団体により合成洗剤そのものが疑問視されて
きた。自然界には本来、浄化能力がある。しかし、「合成洗剤」など非常に分解しづらいものが混入す
るとその浄化能力は激減する。その結果、多くの河川で「発泡問題」が発生した。琵琶湖、手賀沼など
での「水質汚染問題」はいまだに解決していない。洗剤業界は無リン化を迫られた。そして、「洗剤は
悪」というイメージが強く残った。
追い込まれると選択肢が限定されるのは世の常で、洗剤業界ではその場限りの解決しかしてこなかっ
た。彼らに欠けているのは「消費者の目線」「茶の間の目線」だ。人にも優しく、環境にも優しい洗剤
を自ら開発していれば、社会の支持も変わっていた。
「業界の常識は社会の非常識」という見本である。「茶の間の目線」にあった業界は少ない。
(伊太郎)
◆「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。
このコーナーは新聞各紙に掲載された中で経営に役立つと判断したものを掲載しています。
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