〜経済気象台〜
経済気象台(16.6.9) 景気回復の負の側面
この1年、日本経済は大方の予想を超えて回復してきた。03年度の実質経済成長率は、当初の
見込みを大きく上回る3.2%となった。株価も昨年4月のボトムから5割も上昇した。回復に取
り残されたと言われた中小企業や地方経済も、着実に上向いている。政府やエコノミストが楽観的
になるのも無理はない。
しかし、全事業が明暗を併せ持つように、今回の景気回復にも見落としてはいけない影がある。
それは、経済発展の最も重要な基盤である人的資源が傷ついていることである。今回の回復を牽引
したのは企業だった。企業はリストラを進める中で、雇用コストを削減し収益を上げた。それが新
たな投資余力を生み、景気を押し上げた。日本の高すぎる賃金が適切なレベルに調整されることは、
グローバル競争下では不可避であった。しかし、一方で、最近の労働市場の変化を見ると、単なる
賃金調整にとどまらず、経済発展を支える技能や知識の破壊が起きているのではないかとの危惧を
抱く。
中高年のリストラは、コスト削減と引き換えに、長年にわたり培われてきた技能を捨てることに
もなった。若年失業者やフリーターの増加は、スキルの蓄積や継承が断絶する懸念を高めている。
パート比率の上昇はアメリカを超えて進み、従来は豊富な知識や現場経験が求められた経営職階(
スーパーの店長など)もパートになった。
企業にしてもマクロ経済にしても、持続的発展の基礎には、必ず知識や技能の蓄積がある。アメ
リカ経済の繁栄の基礎には、軍需を淵源とする技術や知識の蓄積があり、北欧諸国の経済成長も、
教育など人的資源育成の強化が寄与したという。一方で日本は、これまで蓄積されてきた技能や知
識を捨て、労働の価値を下げ、将来の発展の基盤を自ら壊している。景気が回復している今こそ、
10年後、20年後の日本を支える技術や知識に目を向けるべきである。
(山人)
このコーナーは新聞各紙に掲載された中で経営に役立つと判断したものを掲載しています。
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