〜経済気象台〜


崖っぷち経済 下(14.12.29) 均衡縮小〜身削り続く安値消耗戦

 「負債を減らすためです。給料を下げさせてください」。セメント業界最大手の太平洋セメントは1
0月、従業員約2500人全員を対象に2年間の賃金の3%をカットを労組に通告、翌11月から実施
した。
公共事業削減の逆風を受け、赤字経営が2年続く。設備投資を積極的に進めた結果、有利子負債は90
00億円余り。現金収入の13年分だ。鮫島彰男社長は、「負債削減が最大の課題だ。日本経済は今後
3年間はダメだろう。身を削る非常事態だ」と話す。
 「いまはシュリンク・ツー・グロウ(伸びるため、縮む)。成長の芽を育てる時代だ。」と東芝の岡
村正社長は、我慢を強調する。大手7社だけで01年度から計12万人を削減した電機業界は、設備投
資でも前年の3〜4割減という縮小が続く。製造業全体でも設備投資はIT(情報技術)ブームの01
年1〜3月期を境にして、前期比6四半期連続のマイナス。就業者数も前年に比べ55万人減った。

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 「まじめに借金を返している中堅や中小企業の仕事が、救済された企業に奪われている」。全国建設
業界には会員企業からの苦情が相次ぐ。準大手の戸田建設の吉沢経浩専務は「安値受注競争に巻き込ま
れてしまった」と、今期が上場以来初の赤字に転落することを嘆く。
京支店に指示した。みずほ、UFJ両グループへの貸し出しが止められた。
 経営破たんしたおかげで、巨額債務を最大9割カットしてもらい財務体質を改善、死地から蘇生した
企業。構造不況下の建設業界にはそんな企業がずらりと並ぶ。公共工事受注のライバルとして復活し、
マンションの建設受注で安値攻勢をかける。もともと過当競争の業界で、混乱は一層ひどくなる。
 工場の生産システム制御装置の大手メーカー横河電機は10月から国内19工場のうち15を閉鎖し
始めた。内需の減少を、製品の値下げ、薄利でしのいでいては競争力を衰弱させると判断。国内工場を
一気に整理する。その代わりに、石油化学プラントの受注が急増する中国に中核の制御機器の生産工場
を建てる。「成長する市場に乗らないと事業が成立しない」(八木和則取締役)
 

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 「勝ち組」の代表のトヨタ自動車が43年前、初の乗用車専用工場として稼動した愛知県豊田市の元
町工場で、来夏、最新の生産ラインが登場する。海外工場で生産する車の試作用だ。代わりに国内向け
ラインを一つ廃止する。
 トヨタは今年9月期の中間決算で、国内販売台数が初めて海外の半分に落ち込んだ。販売台数が10
年前の半分に激減したトラック業界からは、「国内に大きな希望を持てない。経営再建に残された最後
のチャンスは中国だ」(井田義則・いすず自動車社長)との声が上がる。
国内産業の空洞化が進む。


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 大手スーパーの西友は9月、1本390円の折り畳み式のワンタッチ傘を売り出した。競合店は普通
の折り畳み傘で500円〜1000円台。「メーカー探しからやり直せ」と悔しがらせた。
超安値の実現は、世界展開する巨人の軍門に下ったおかげだ。西友の経営権を握った米小売最大手のウ
ォルマートが、独自ルートを使って中国で仕入、西友に供給した。国内スーパーは中国メーカーに万単
位で発注するケースが多いが、ウォルマートは「2桁多い」。西友幹部は「限界と思っていた価格を一
気に付き抜けた」と驚く。
 長引く消費不況で体力の限界に直面し、今、外資との提携に活路を探る企業が多い。しかし、その先
には、際限のない安値競争による消耗戦も待ち受ける。




このコーナーは新聞各紙に掲載された中で経営に役立つと判断したものを掲載しています。
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